キングアーサー

ごきげんよう

 

 

2023/1/17〜2/5

 

 

舞台を見た。

予定から約5日間遅れての初日を迎え、そして無事に一旦幕が降りた。

ずっと楽しみにしていた舞台。

た、たのし〜〜〜〜!!!!

 

 

タイトル

ミュージカル キングアーサー

会場

東京芸術劇場 中劇場

 

 

多くの厨二病にとって、アーサー王伝説は避けたくても避けられない物語である。

私もそうである。騎士はかっこいい。

そんなかっこいい騎士たちと、華やかな楽曲を存分に浴びることができて楽しかった。楽しい話ではないが。

 

この舞台はもともとフランスのミュージカル作品。韓国でも上演されている作品とのこと。

フランスのミュージカルだが、今回は韓国版のミュージカルを手がけた演出家さんで、日本キャスト版としては初演となる。

 

物語としては、アーサーがエクスカリバーを引き抜き、アーサー王となったあと、様々な困難を乗り越え、民と平和、そして愛を守るための王としてさらなる成長をしていく話だが、主に愛などの感情に重きが置かれている。

 

正直なところ、よくよく考えると、そんなことある??みたいなこともなくはないし、王道とされる話とは異なる部分が多々あるが、そもそも伝説の話だし、ショーとも言えそうな派手な歌唱とダンス、豪華な衣装や殺陣など、エンタメ要素が強いため、まあそんなこともある♪楽しい♪という感情になった。

 

今回は複数回見たため、それらをひとつにまとめた大きな感想を書く。

 

 

幕が上がってまず第一に人がめっちゃいる。

それはそう、と言えばそれまでなのだが、普段は規模の小さな舞台やアンサンブルが少ない舞台を見ることが多いため、やはり圧倒される。

剣術大会や戦、街中のシーンで迫力も歌声も厚みがあり、それだけで物語に自分が入ったような感覚になる。

こういった人の数の圧というか、存在感を感じると、私は舞台独自の感覚で、舞台が好きだなあと思ったりする。

 

 

主人公アーサーを演じる浦井健治さん。

剣を引き抜く前の何も知らないアーサーから、王として成長していく姿、そしてどんな時も変わらない優しい眼差しが素敵だった。

この公演では前方センターブロック6列までがSS席、キングシートという名称で販売されていたのだが、入ってみたら王様にめろめろりんになってしまいウケた。

シートに座ると特別なサービスがあるわけではない。前方でよく見える、というのが大きいのだが、アーサーは大体センターにいるため、両手を広げて騎士を率いたり、高らかに宣言をするなどのシーンが目の前で繰り広げられる。豪華な衣装とその雄大な振る舞いにいつのまにか、私はこの王国の民なんだ!!!という自覚が湧いてきて、ラストの円卓の騎士たちがアーサーに忠誠を誓うシーンでは、心の剣を引き抜いていた。私は王の騎士になります。

 

 

主人公のライバルとも悪役ともいえるメレアガンの伊礼彼方さん、加藤和樹さん。

伊礼さんの印象は、実力は申し分ないのにどこか歪んだ感情表現しかできないような、湿度を感じるメレアガン。アーサーへの嫉妬や憎しみ、王座もグィネヴィアへの愛も、力だけではどうすることもできない。歌や殺陣の力強さとは反対に、捕らえたグィネヴィアに対する縋るような不安定さが憎めなかった。

加藤さんは、よりスマートな印象。とはいえメレアガンなので、感情は歌で爆発させていて、騎士として歩んできた道のりがじわじわと崩れて壊れていく哀しみも感じるような気がしてよかった。

悪に染まるにつれ、目元に黒いメイクが足されていき、荊のようなデザインになるのが好きだった。ビジュがめちゃくちゃ良い。

2人ともかなり高音で歌う楽曲があるのだが、どちらもすごくて圧倒された。メレアガンの暗く揺れ動く心情を、がなり声ではなくパワフルで繊細な高音で表すのが、とてもこの物語に合っていて好きだった。

 

 

物語を大きく揺るがすグィネヴィアの小南満佑子さん、宮澤佐江さん。

小南さんはディズニープリンセスのような可憐さと歌、スタイルだった。頬に入っているゴールド系のハイライトがとてもきれいで、画質良!!4K?!になった。この作品は基本セルフメイクらしいので、メイク道具を知りたい。

宮澤さんにはおてんばさも感じられ、仇ともなってしまう素直さがより一層、グィネヴィア個人としての魅力を引き立てていてなんとも言えない気持ちになった。

 

 

グィネヴィアとともに物語を大きく揺るがす湖の騎士ランスロットの平間壮一さん、太田基裕さん。

平間さんは、騎士としての実力と誠実さが前面に出ていて、殺陣や歌から少しワイルドさもある印象。

太田さんは、強さと誠実さに加えて優美さが強く、殺陣も歌も華やかな印象。

2人とも全く違うランスロットで楽しかった。私の印象だと平間さんはリアコ系騎士、太田さんは胸キュン系騎士。好みは分かれると思うが、2人とも全身真っ白のランスロット用の服装がとても似合っていて、真っ白なマントを華麗に翻しながら敵を倒していく姿が美しかった。

平間さんは昨年のハンサムライブ(アミューズ事務所主催の所属俳優大集合イベント)で、満面の笑顔やダンス、素に近い姿を見ていたので、グィネヴィアの目を見つめて跪くなどのロマンチックな姿に勝手に動揺した。

太田さんは別作品で派手な役や華やかな役を見たことがあるので、イメージ通りといえばイメージ通りなのだが、ランスロットの初登場、白いマントで隠されていた顔が見えるシーンで、白さと煌めきが眩しすぎて勝手に動揺した。

 

 

魔女モルガンの安蘭けいさん。

ビジュアル、演技、歌、全て最高だった。

モルガンはアーサーとは父親違いの姉にあたる。しかしアーサーの父ユーサーのせいで母親を失ったことを知っていて、その息子のアーサーを憎んでいる。その憎しみを弟のアーサーにぶつけるのは理解し難い部分ではあるが、モルガンの心境を語る楽曲が多く、悪役ともヒロインとも思えた。

たしか、制作発表の時に悪役はあんまりやったことがなくて…と仰っていた気がするのだが、声と振る舞いがめちゃくちゃ素敵でかっこよくて、安蘭さんにすっかりめろめろりんになってしまった。悪役たくさん見たい。

 

 

アーサー王を支える騎士ガウェインを演じる小林亮太さん。

アーサー王と行動を共にし、円卓の騎士としてランスロットとも並ぶ騎士のガウェインは舞台上にいる時間は長めだが、忠実な騎士という性格もあってか、セリフは多くない。しかし、確実に存在感があって、とても良かった。一挙一動、目線ひとつひとつに重みと表情があり、そこにガウェインとしての信念、アーサーへの忠誠心が滲むようだった。

殺陣とダンスも隙がなく、強さを感じつつも基本に忠実な美しさがある。華やかに舞うようなランスロットと対照的とも言える鮮やかで的確な動きをするガウェイン、そしてセンターにアーサーが佇む構図、めちゃくちゃわくわくした。

異常なほどの真っ直ぐさを持つ人間大好き部に所属しているので、どんなことがあってもアーサーに忠誠を誓うガウェイン、マジでサイコーサイコーサイコーだった。

 

 

アーサーの義理の兄のケイを演じる東山光明さんと魔法使いマーリンを演じる石川禅さん。

2人は物語に絡みながらも、合間にクスッと笑えるやり取りをしてくれてとてもかわいい。

魅力的なキャラクターなので、派手な見せ場が特にないのは少し残念な気もした。

ケイがランスロットの死を嘆くグィネヴィアに対して、ケイの持ち前の明るさを壊すことなく、でもグィネヴィアに刺さるようなトーンでアーサーのことを伝えていて良かった。

マーリンはメイクがキラキラでめちゃかわだ。キャラクターとしては、魔法使いで運命が第一優先なので、何かと運命が運命が…と言っていて、何故なんだ…という気持ちになるが、石川さんの厚みのある声とお茶目さもあるマーリン自体がかわいらしく、ファンタジーや伝説の物語の存在として良かった。

 

 

キャストのほか、衣装がとても素敵だった。

遠くから見ても、良い布がたっぷりと使われていて手間がかかっていることがわかる。

特にアーサーが後半で身につけるマント、婚礼の際のアーサーとグィネヴィアの衣装は展示してほしいくらい美しい。ゆっくり見たい。

個人的な好みとしては、モルガンの一幕の衣装も大好きだった。

深い黒色のベロアの光沢と過度ではないセクシーさが最高。深く入ったスカートのスリットからはロングブーツが見え隠れしている。

語り部として城に入ってきた怪しさと悪の魔女である強さを感じたし、その衣装を着こなす安蘭けいさんもめちゃくちゃかっこよかった。

そして騎士たちの甲冑とマントが美しい。おそらくマントも映えるように殺陣も工夫がされていて、この作品だからこそ見られる美しさだと思う。

騎士が身につけている鎖帷子はひとつひとつがシルバーの糸で鎖編みがされていて、手編みとのこと。鎖の丸が全身に付いているのに手編み?!丸がいくつあるんだ。手間を想像すると目眩がする。とてもきれいだった。

 

 

楽曲のインパクトがすごかった。

フレンチロックを使用したミュージカル、と理解していたつもりだが、想像以上で驚いた。

制作発表の時に一部楽曲を歌唱披露していて、その時もインパクトに驚いたのだが、それ以外の曲もつよい。

そんな強曲たちを強キャストたちが歌いこなしていくので気持ちが良い。

さらに楽曲によっては演出と振付がかなりショー寄りで、一瞬キャラクターソングのライブかと思ったし、踊りてえ!と思った。(踊りません)

モルガンと悪に染まっていくメレアガンでデュエットする楽曲があるのだが、2人のビジュアルと歌声の強さ、振付のシンメ感がヤバくて、ディズニーヴィランズかと思った。ってか、ディズニーヴィランズだった。なんか見るたびに1人でノリノリで帰っていた。ダンダリダンダリダンダリダデュレ♪

何回か見ているうちに、3部構成になって最後に楽曲ライブやってくれないかなというよこしまな気持ちがわいた。

 

 

この物語はミュージカルがとても合っていると思う。かなり希望のあるラストになっていて私は好きだった。

 

というわけで、とっても楽しい公演期間を過ごした。

場面の移り変わりもきれいで、あっという間の3時間だった。